隠蔽配管エアコン交換の落とし穴と対処法

2025年06月20日

エアコン

「隠蔽配管」エアコン交換の落とし穴と対処法

 

◆ 「隠蔽配管」とは?

エアコンの冷媒配管を壁の中や天井裏、床下に通す施工方法のことを「隠蔽配管」と言います。
新築マンションや注文住宅でよく見られ、見た目がスッキリするのが特徴です。

しかし、いざエアコンの交換が必要になったとき、この隠蔽配管が大きな壁になることがあります。

 

◆ 一般的な壁掛けエアコンとの違い

・一般的な壁掛け型隠蔽配管タイプ

・配管の露出室内に露出壁や天井の内側に埋設

・工事の難易度低い(標準工事)高い(専門対応が必要)

・配管交換の自由度交換しやすい交換しづらい(場合により不可能)

・工事費安価高額になる場合あり

 

◆ 隠蔽配管がある場合の交換時の5つの注意点

① 配管の再利用の可否を事前に確認する

隠蔽配管の配管は基本的に交換が困難です。そのため、既存配管の劣化状態や太さ(径)が、新しい機種に適合するかを必ず確認します。

 

② 冷媒ガスの種類・圧力の違いに注意

昔の配管(特にR22仕様)は、現行のR32やR410Aの高圧冷媒に耐えられない可能性があります。経年劣化やピンホール漏れを起こしやすくなり、トラブルの原因に。

 

③ フレア接続部のチェックが必要

壁内のフレアナット(配管と本体をつなぐ部分)が劣化・変形していると、ガス漏れのリスクが高まります。再利用時は漏れチェックが必須です。

 

④ ドレン配管の勾配や詰まりにも要注意

冷房時に出る排水(ドレン水)が、逆流や漏れを起こすケースも。隠蔽されたドレン管が勾配不良や詰まりを起こしていると、天井から水漏れすることもあります。

 

⑤ 工事費が高くなる可能性

隠蔽配管の再利用には事前点検・追加部材・慎重な作業が必要で、標準工事より費用が数万円以上割高になることもあります。さらに不具合があれば、露出配管に切り替える工事が必要となり、壁や天井を壊すケースも。

 

◆ よくあるトラブル事例

・配管再利用したが数ヶ月後にガス漏れが発覚
 →再工事が必要、費用が二重に

・勾配不良で水漏れ、天井クロス張り替えに発展
 →数万円の損失

・対応できる業者が見つからず、工事が長期化
 →繁忙期は対応不可の業者も多数

 

◆ 対応可能な専門業者を選ぶポイント

・隠蔽配管対応の経験が豊富

・事前に点検・配管調査を行ってくれる

・無理に再利用せず、リスク説明が丁寧

・施工保証がある(特にガス漏れなど)

 

◆ 隠蔽配管でも失敗しないために

・現地調査のあるエアコン販売店・工事業者を選ぶ

・現場写真をスマホで撮って業者に事前送付

・管の材質・長さ・太さが合わない場合は、露出配管も検討

 

【 ◆ メーカーごとに異なる「隠蔽配管対応」性能と制約 】

エアコン交換時に隠蔽配管をそのまま使おうとする際、「どのメーカーの機種を選ぶか」も非常に重要な要素です。なぜなら、メーカーによって以下のような対応方針や仕様に違いがあるためです。

 

【1】再利用に寛容なメーカーとそうでないメーカー

メーカーでは「既設配管再利用不可」や「露出配管を推奨」としている場合もあり、対応機種に制限が出ることもあります。

 

【2】接続位置・設計の違いにも注意

メーカーによって、冷媒配管の接続位置(右出し・左出し・背面出し)の仕様が異なり、
 隠蔽配管との
位置ズレが発生することも
あります。
 → 結果として、壁を一部削る工事が必要になるケースも。

また、室内機の高さ・幅・厚みもメーカーにより微妙に異なり、既存の化粧パネルやスペースに合わない場合もあります。

 

【3】保証対応にも違いがある

一部メーカーでは「既設配管を再利用した場合、冷媒系統の保証が対象外」となることがあります。
 → その場合、配管再利用による不具合(ガス漏れ・詰まり)は有償修理になる可能性が高いです。

 

◆ 機種選定は「価格」よりも「適合性と工事性」を優先

エアコンの交換を検討する際に、価格や省エネ性能だけでなく、「隠蔽配管との相性」という視点を持つことが非常に重要です。
無理に安価なモデルを選ぶと、工事が複雑化し、結果として費用や手間がかさむリスクがあります。

 

【 ◆ 冷媒配管の「接続口径の違い」による注意点 】

エアコンを交換する際、冷媒配管の太さ(接続口径)新しいエアコンと合わないという問題がよく発生します。これは特に「隠蔽配管」の場合、既存配管が交換できないため、非常に重要なチェックポイントとなります。

 

❖ 冷媒配管には「太さの規格」がある

エアコンの冷媒配管には、通常次のような2本の銅管が使われます:

名称通称一般的な口径例(冷房能力により異なる)

液管(細い方)低圧管φ6.35mm、φ9.52mm など

ガス管(太い方)高圧管φ9.52mm、φ12.7mm、φ15.88mm など

 

❖ 新旧機種で口径が違うことがある

古い機種(R22冷媒時代)は、現在主流のR32やR410A機と接続口径が異なる場合があります。新しい機種に取り換えたくても、既存の配管サイズが適合しないと、メーカーが推奨しない施工になります。

 

❖ 違う口径を「無理やり接続」するとどうなる?

・冷媒漏れのリスクが大幅に上昇

・冷暖房の効率が低下し、電気代が増加

・メーカー保証が適用外となる可能性も

・将来的な不具合や修理時に配管再施工が必要になることも

 

❖ 変換継手(アダプター)での対応は可能?

一部の現場では「変換継手(アダプター)」を使って、異なる口径の配管同士をつなぐ方法もありますが、

・メーカーにより非推奨または保証対象外

・継手部分が隠蔽部にあるとメンテナンス不可

・アダプター接続部が将来的に漏れや腐食のリスク

などの理由から、慎重な判断が必要です。

 

◆ 安全な対応方法とは?

・事前に既存配管の口径を正確に測定

・新しいエアコンの配管サイズ表と照合

・適合する機種の選定(配管サイズが合う機種を探す)

・合わない場合は、露出配管に切り替える工事の検討

 

◆ まとめ:「見えない配管」こそ慎重な判断を

隠蔽配管のエアコン交換は、プロでも慎重な判断が求められます。
見た目が美しい反面、修理・交換時には想定外のコストや工期がかかることもあります。

だからこそ、「安い・早い」だけで業者を選ばず、きちんと説明してくれるプロに任せることが、長い目で見れば安心・安全な選択です。