マンション管理・再生の新時代へ!
2025年07月01日
マンション管理・再生の新時代へ!「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」が成立
・令和7年6月24日、第217回国会において、「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」(以下、「改正区分所有法等」)が成立し、同日に交付されました。この法律は、深刻化する老朽化マンション問題に対応するため、建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)をはじめとする関連法規を抜本的に見直し、マンションの適切な管理・再生を強力に推進することを目的としています。
【 なぜ今、法改正が必要だったのか? 】
高度経済成長期以降に建設されたマンションが築年数を重ね、全国的に老朽化が進行しています。しかし、現行の法制度では、管理組合の運営や大規模修繕、建て替えなどの意思決定が困難なケースが多く、適切な管理が行き届かないマンションが増加していました。これにより、居住者の安全・安心の確保が困難になるだけでなく、地域の住環境の維持、さらには不動産市場全体の健全性にも影響を及ぼすことが懸念されていました。
本改正は、これらの課題を解決し、持続可能なマンション社会の実現を目指すものです。
【 改正のポイント:マンション管理・再生を加速する具体的な措置 】
今回の改正区分所有法等では、多岐にわたる改正が行われていますが、特に以下の点が重要となります。
1. 管理不全マンションへの対策強化
外部専門家による管理の円滑化:
管理組合の専門性不足や担い手不足に対応するため、外部の専門家(弁護士、建築士、マンション管理士等)が管理組合の管理者として選任されやすくなる制度が整備されます。これにより、専門的な知見に基づいた適切なマンション管理が期待されます。
外部専門家が管理者となる場合の権限や責任が明確化され、より円滑な意思決定が可能となります。
管理組合への国の関与強化:
適切な管理が行われていないマンションに対して、国や地方公共団体が助言・指導を強化できる規定が設けられます。
場合によっては、管理不全の状態を解消するための必要な措置を命令できるなど、より実効性のある対応が可能となります。
2. 建て替え・大規模修繕の円滑化
建て替え決議要件の緩和(一部):
現行の建て替え決議(区分所有者および議決権の5分の4以上の賛成)は維持されるものの、特定の場合(例えば、耐震性の不足など、建物の安全性に重大な問題がある場合)においては、要件が緩和される可能性があります。これにより、老朽化が著しいマンションの建て替えが促進されることが期待されます。
ただし、具体的な緩和要件については、個別のケースに応じて慎重な判断が求められます。
団地型マンションの再生手続きの合理化:
複数の棟で構成される団地型マンションの建て替えや再生において、個別の棟ごとの合意形成ではなく、団地全体としての意思決定をより円滑に進めるための規定が整備されます。これにより、大規模な再生事業の実現可能性が高まります。
大規模修繕積立金の適正化:
管理組合に対して、長期修繕計画の作成・見直しや、それに伴う修繕積立金の見直しをより強力に促す規定が設けられます。
積立金の不足が予測される場合には、早期に適切な額への引き上げを促すための仕組みが導入される可能性があります。
3. 区分所有者の権利・義務の明確化
情報公開の強化:
管理組合の財務状況や大規模修繕計画など、区分所有者にとって重要な情報がより積極的に開示されるよう、情報公開に関する規定が強化されます。これにより、区分所有者の管理組合運営への関与を促進し、透明性を高めます。
共用部分の使用ルールの見直し:
民泊利用やリモートワークの普及など、社会状況の変化に対応できるよう、共用部分の使用に関するルール設定の柔軟性が向上します。
ただし、他の区分所有者の利益を不当に害さない範囲での利用が前提となります。
【 今後の展望 】
今回の改正区分所有法等は、マンションのストック型社会への移行を見据え、その適切な維持・管理・再生を国家的な課題として捉えた画期的なものです。これにより、多くの老朽化マンションが抱える課題が解決に向かい、居住者の皆様のより安全で快適な暮らしが実現されることが期待されます。