「囲繞地を売却・購入する際の注意点」

2025年08月29日

1. 囲繞地(いにょうち)とは?基礎から解説

「囲繞地(いにょうち)」とは、周囲を他人の土地に囲まれていて、公道に直接出られない土地をいいます。


日本の都市計画では、土地に建物を建てるためには 道路に2m以上接していること(接道義務) が必要です。

 

しかし、囲繞地はこれを満たさないため、以下のような制約があります。

・建物を建てることができない(再建築不可)

・不動産としての利用方法が限定される

・資産価値が大きく下がる

・身近なイメージ

 

例えば「袋小路の奥にある家」や「昔の分筆で細かく分けられた土地」などが囲繞地になりやすいケースです。

2. なぜ囲繞地が問題になるのか?

囲繞地は一見すると小さな土地問題ですが、実際の不動産取引では大きな影響を及ぼします。

 

問題点1:建築できない

→  一般の人が住宅を建てられないため、需要が非常に少ない。

 

問題点2:売却しにくい

→  売りたいと思っても買主は限られる(隣地所有者か一部の投資家)。

 

問題点3:担保評価が低い

→  金融機関が担保価値を認めないため、ローンがつかない。

 

問題点4:相続のトラブル

→  相続人が処分に困り、長期間放置されることも多い。

3. 囲繞地の典型的な事例

事例① 相続で受け継いだが利用できない土地

相模原市のCさんは、父親から小さな土地(40㎡)を相続。

しかしその土地は囲繞地で、建物も建てられず、駐車場としても使いにくい立地でした。

固定資産税だけが毎年発生し、結局、隣地所有者に安く売却することになりました。

 

事例② 隣地に買い取られて価値が生まれたケース

座間市のDさんは、囲繞地(25㎡)を持っていました。

隣地所有者が「庭を広げたい」と希望していたため、相場より安い金額で買い取ってもらい、結果的に双方が満足できました。

4. 囲繞地を売却する際の注意点

ポイント1:まずは隣地所有者に声をかける

一番現実的な買主は隣地の方です。特に「庭を広げたい」「駐車場を増やしたい」といった需要があれば、スムーズに話が進みます。

 

ポイント2:境界確定をしておく

測量を行い、境界を明確にしてから売却活動を始めると、買主の安心につながります。

 

ポイント3:価格の目安を把握する

囲繞地は通常の宅地相場の3割~5割程度に下がるケースが多いため、相場を正しく理解したうえで交渉することが大切です。

5. 囲繞地を購入する際の注意点

囲繞地の購入は「将来の利用」をしっかり考える必要があります。

 

単独で使うなら制限が多い
→ 倉庫や資材置き場、家庭菜園くらいしか使えない。

 

隣地と合わせると価値が出る
→ 接道義務を満たすことで、建物が建てられるようになる可能性あり。

 

投資目的には不向き
→ 買値より高く売れるケースは少ない。

6. 囲繞地と通行権

民法210条では「囲繞地通行権」が定められており、囲繞地の所有者は隣地を通行して道路に出ることができます。

 

ただし、注意すべき点は次の通りです。

・通行はできても建築はできない

・通行路をめぐって隣地とトラブルになりやすい

・補償金を支払う必要がある場合がある

7. 囲繞地の価格と評価

評価の実態

通常の宅地相場の 30~50%程度

 

隣地にとって有用なら高めの価格がつくこともある

 

・小田急相模原エリアでの参考例

通常の宅地:坪70万円

囲繞地:坪20~30万円程度

8. 囲繞地売買にまつわるトラブル事例

 

・事例① 隣地との通行権をめぐる裁判

ある囲繞地では、所有者が自宅まで車を通すために隣地を横切る必要がありました。
民法210条に基づき「囲繞地通行権」は認められるものの、

隣地所有者は「庭を横切られるのは困る」と主張

囲繞地所有者は「最短距離を通りたい」と主張

お互いの意見が食い違い、話し合いがまとまらず裁判に発展しました。

最終的には裁判所が「隣地所有者への負担が少ない経路」を認め、補償金を支払う条件で和解しましたが、解決まで数年を要しました。

 

教訓: 通行権があるからといって自由に好きな場所を通れるわけではなく、隣地との協議が不可欠です。

売却の際も「どの位置を通れるのか」を明確にしておかないと、買主との契約トラブルに発展します。

 

・事例② 相続人同士の意見が合わず放置

あるご家庭では、父親から相続した囲繞地を兄弟3人が共有していました。
ところが、

長男は「隣地に売却して処分したい」

次男は「家庭菜園として使いたい」

三男は「売却しても安いなら放置でいい」

と意見が対立。結論が出ないまま10年以上が経過し、固定資産税だけが毎年かかり続けました。
最終的に、長男の債務整理をきっかけに土地が差し押さえられ、競売にかけられることに。結果的に市場価値よりも安く手放すことになり、誰にとっても不本意な結果になりました。

 

教訓: 相続で囲繞地を取得した場合は、早めに処分方法を決めることが重要です。共有名義のまま放置すると、将来的に処分が難しくなり、資産どころか負担になることがあります。

9. 囲繞地を有効活用する方法

隣地とまとめて再建築可能にする

駐車場や資材置き場として貸し出す

自治体に寄付や売却を相談する

隣地と「地役権設定契約」を結び、通行や利用のルールを明確化

10. 専門家に相談する重要性

囲繞地は「建築できない土地」という制約だけでなく、通行権の扱い・境界の不明確さ・相続による権利関係の複雑さなど、法律や実務上の問題が絡み合います。
そのため、自己判断で処分しようとするとトラブルを招きやすく、専門家のサポートが欠かせません。

 

① 不動産会社(仲介業者)

役割:売却・購入の仲介、相場の提示、隣地所有者との交渉サポート

 

囲繞地を売りたい場合
→ 「隣地所有者にどのようにアプローチすれば良いか」を提案してくれる。
→ 相場より低くなるケースが多いが、買主が限定される分、価格の妥当性を客観的に示してくれる。

 

囲繞地を買いたい場合
→ 将来的に隣地と一体利用できるか、再建築が可能になる可能性があるかなど、出口戦略を含めてアドバイス。

 

注意点
→ 囲繞地の知識や経験が少ない不動産会社だと、接道義務や建築制限を十分に説明しないまま取引を進めてしまうこともあります。信頼できる地元業者を選ぶことが重要です。

 

② 司法書士

役割:権利関係の整理、相続登記、地役権設定契約の作成

 

相続で囲繞地を取得した場合
→ 相続登記を通じて所有権を明確化しないと、売却も活用もできません。

 

通行権を契約で定めたい場合
→ 隣地との間で「地役権設定契約」を結び、どこを通れるか、補償金はいくらかを正式に登記することができます。将来のトラブル防止に有効です。

 

権利関係が複雑な場合
→ 共有名義や担保設定が絡むケースでは、司法書士の手続きサポートが不可欠です。

 

③ 土地家屋調査士

役割:境界確定測量、登記簿への反映

 

境界が曖昧なままでは売却が難しい
→ 「どこまでが自分の土地なのか」が不明確なまま売却しようとすると、買主が不安を抱き、契約が進みません。

 

隣地との境界トラブルを防ぐ
→ 測量によって境界杭を設置し、隣地所有者と立ち会い確認を行うことで、売却後の紛争リスクを減らせます。

 

小規模な囲繞地こそ重要
→ たとえ数坪の土地でも、正確な面積と境界が明確であれば、隣地所有者が購入を検討しやすくなります。

 

④ 弁護士(必要に応じて)

※本文にはなかった役割ですが、囲繞地では弁護士が必要になる場面もあります。

・隣地との通行権をめぐって紛争が発生した場合

・仲介会社の説明不足などで損害を被った場合

・相続人同士で合意できず、調停や裁判になる場合

・法律上の争いに発展した際は、弁護士の力が欠かせません。

11. まとめ

囲繞地(いにょうち)は、たしかに「売れにくい」「家が建てられない」というイメージが強く、敬遠されがちです。
しかし、見方を変えれば 隣地を持つ人にとっては非常に役立つ土地 になることがあります。庭や駐車場を広げたり、土地をまとめて再建築可能にしたりと、プラスの価値が生まれる場合もあるのです。

 

そのため、囲繞地を売却・購入するときは、次の3つのポイントを意識すると失敗しにくくなります。

・利用できる範囲を正しく理解すること
 → 建築はできるのか?使えるのは駐車場や倉庫だけなのか?といった点を把握しておく。

 

・隣地所有者との交渉を大切にすること
 → 一般の人には使いにくい土地でも、隣の人には価値があるケースが多い。最初に声をかけてみることが成功への近道。

 

・専門家に相談してトラブルを防ぐこと
 → 境界や通行権の問題は個人だけでは解決しにくい。早めに不動産会社や司法書士、土地家屋調査士に相談すると安心。