旧耐震住宅と火災保険の注意点

2025年09月20日

火災保険

1. 旧耐震とは?火災保険に加入できないことがあるって本当?

1-1. 旧耐震と新耐震の境目

旧耐震:建築確認が1981年(昭和56年)5月まで
震度5程度で倒壊・崩壊しない想定。

新耐震:1981年6月以降
震度6強〜7でも、倒壊・崩壊しないことを目指す設計。

 

1-2. 保険会社の見え方

倒壊・全損や水濡れ・漏水などの“事故頻度”が高くなりがち。

築年数が長い=劣化蓄積。配管・屋根・外壁・電気設備などの故障・不具合リスクが増加。

 

その結果、

(A) 保険料が高い/(B) 引受条件が厳しい/(C) そもそも不可
のどれかに触れやすくなります。

 

・購入前に必ず確認:旧耐震は「加入できない保険会社がある」

旧耐震(建築確認が1981年6月以前)の物件は、一部の保険会社で火災保険の引受不可・条件付き引受になることがあります。

保険に入れない=住宅ローン実行に支障(多くの金融機関は火災保険加入を実行条件にしています)。

銀行紹介の保険会社でも、旧耐震物件は取り扱いができないとしている保険会社もありますので、

慌てないように早めの準備が必要です。

購入申込~契約の早い段階で“保険加入可否の仮審査”を取るのが安全です。

2. 火災保険と地震保険の超要点

2-1. 火災保険(建物/家財)

火災・落雷・破裂・爆発が基本。オプションや商品によって次が付く/選べます。

風災・雹災・雪災

水災(洪水・高潮・土砂)

水濡れ(給排水設備の事故・上階からの漏水)

盗難

破損・汚損(偶然の事故)

費用保険金(残存物片付け・臨時費用・失火見舞金・修理費用 等)

 

評価方法

再調達価額(同等のものを新たに建てる価格)推奨

時価(再調達価額-減価)にすると、支払額が小さくなりやすい

 

契約期間

原則1~5年(長期一括割引は縮小/見直しが進行)

 

免責金額

自己負担を設けると保険料を下げられる一方、小口事故では支払ゼロになりうる

 

2-2. 地震保険(火災保険に付帯)

地震・噴火・津波が原因の損害を補償。

建物・家財とも火災保険の保険金額の最大50%まで設定可。

支払いは損害区分(全損・大半損・小半損・一部損)に応じて定額。

旧耐震ほど必要性は高いが、保険金だけで建替費用全額は賄えないことが多い。

3. 旧耐震ゆえに審査で見られる“具体ポイント”

3-1. 建物(共通)

構造:木造(在来)/鉄骨(S)/鉄筋コンクリート(RC)

屋根材の重量(軽量化済みか)

外壁・屋根の劣化(ひび・浮き・雨漏りの有無)

基礎の状態(無筋・ひび・沈下・蟻害)

耐力壁・金物(補強歴)

電気設備・分電盤(老朽・アース・感震ブレーカー有無)

給排水管隠蔽配管の劣化・更新歴・漏水歴)

違法増改築・再建築不可・接道2m問題 等の法規抵触

 

3-2. 戸建て特有

雨漏り白蟻の放置

屋根の重さ(瓦→軽量化で評価改善)

傾き・不同沈下の兆候

 

3-3. 区分マンション特有

給排水立管・専有配管の老朽水濡れ事故頻度が高い

共用部保険の内容(管理組合加入)と専有部の境界

配管更新・大規模修繕の履歴

エレベーター・受水槽など共用設備の更新状況

4. 加入を通しやすくする“前準備パック”

4-1. 証拠と記録を揃える

耐震診断報告書(評点1.0以上を目指す/改善計画書でも可)

改修工事の見積・写真・領収書

屋根軽量化耐力壁追加金物補強基礎補強

防水・雨漏り補修配管更新(隠蔽配管は図面+写真)

住宅履歴(いえかるて)があれば提出

保守点検記録(電気・ガス・給湯器・分電盤)

 

4-2. 小さな安全投資で“印象”が変わる

感震ブレーカー漏電遮断器

火災報知器の適切配置(電池交換記録も)

止水板・排水口ネット(水害時)

家具の転倒防止ガラス飛散防止

屋外の落下危険物固定(プロパン・物置・看板 等)

 

4-3. 申込フォームに添付したい“6点セット”

建物外観4面写真 2) 劣化部位の近接写真

屋根・基礎・配管の改善前/後の写真

改修見積・領収・保証書の写し

間取り・面積(登記 or 図面)

管理規約や修繕履歴(区分)

5. 補償の選び方“決め順”

STEP1:建物と家財を分けて考える

自宅所有者:建物+家財

賃貸オーナー:建物+賃貸人賠償+修理費用+(家賃減収系があれば検討)

借家人:家財+借家人賠償+修理費用

区分所有:専有部(造作含む)+家財/共用部は管理組合

 

STEP2:重大災害から決める

風災・水災は地域リスクで要否を判断(ハザードマップ確認)

地震保険は“生活再建資金”として優先度高めに

 

STEP3:頻発リスクを抑える

水濡れ(給排水設備):旧耐震では優先

破損・汚損:日常トラブルに備える

臨時費用・残存物片付け・修理費用:自己負担軽減

 

STEP4:免責・評価方法で調整

免責を上げる=保険料は下がるが小口事故は自己負担

再調達価額で建替・修理に備える(時価は原則避けたい)

見積比較“8つの軸”

1,評価方法(再調達/時価)

2,補償範囲(水災・水濡れ・破損汚損・盗難 等)

3,免責金額(0/3/5/10万円など)

4,特約(臨時費用・片付け・修理費用・類焼損害・地震費用 等)

5,地震保険(建物/家財の設定、割引〔耐震・免震等〕)

6,支払実務(Web申請/見積要件/写真要件/提携修理)

7,代理店の支援力(事故時の伴走・見積調整)

8,保険期間・保険料総額(1~5年)

7. 旧耐震に相性の良い“特約セット”

・給排水設備水漏れ損害最重要候補(旧配管・隠蔽配管の事故対策)

・地震火災費用:地震に伴う延焼の初期費用を補う

・臨時費用:被災直後の雑費を広くカバー

・残存物片付け費用:全半壊時の撤去費が高騰しがち

・修理費用特約:小中規模破損の自己負担軽減

・類焼損害/失火見舞金:延焼トラブルのケア

・賃貸人賠償・修理費用(オーナー)

・個人賠償(借家人・区分所有者)

8. 建物種別/立場別の“最適構成例”(考え方)

具体の商品名・料率は会社で異なるため割愛。構成の考え方だけ示します。

 

8-1. 木造戸建(自宅)

建物:再調達価額, 風災◯, 水災(地域次第), 水濡れ◎, 破損汚損◯

特約:臨時費用◎, 残存物片付け◎, 地震火災費用◯

地震:建物+家財を必ず検討

事前対策:屋根軽量化/金物補強/感震ブレーカー

 

8-2. 区分マンション(自宅)

専有部+家財:水濡れ◎(上階漏水/自室配管)

破損汚損◯、盗難◯

地震:家財も忘れず

事前対策:配管更新履歴の把握/止水方法の共有

 

8-3. 賃貸に出すオーナー(木造・テラス・長屋)

建物:再調達価額、賃貸人賠償・オーナー修理費用◎

空室時の最低補償、入退去の破損対応を想定

入居者には家財+借家人賠償を必須化(契約条件)

 

8-4. 区分オーナー(賃貸)

専有部:水濡れ◎、破損汚損◯

入居者:家財+借家人賠償加入を入居要件に

管理組合:共用部保険の範囲確認(重複・空白を避ける)

 

8-5. 管理組合(共用部)

旧耐震は水濡れ・機械設備故障の頻度が高い

受水槽・配管・高架水槽・エレベーター等の更新計画を保険会社へ説明

9. 加入~事故まで“実務フロー”

9-1. 申込~引受

物件情報入力(構造・築年・面積・所在地)

写真・図面・診断書・改修記録提出

追加質問(雨漏り歴・配管更新・電気設備)

見積提示 → 補償・免責を調整 → 成立

 

よくある差し戻し

「雨漏りを修理してから」

「配管更新工事の見積・写真を」

「違法増築部は対象外」 等

 

9-2. 事故が起きたら

安全確保二次被害防止(止水・養生)

日時・状況・写真・動画を確保

修理業者の見積(複数社が望ましいケースあり)

保険会社へ速やかに連絡(受付番号取得)

現地調査/書類提出 → 支払

否認・減額の典型

経年劣化・施工不良起因(保険の“偶然性”に欠ける)

免責以下の小口

範囲外(例:地震起因なのに火災保険のみ)
原因特定の記録(雨・風・台風・漏水日時)を丁寧に。

10. ケーススタディ(6例)

ケース1:築50年木造・雨漏り放置

申込:風災・水濡れ希望

審査:修理完了後であれば可。未修理は引受不可

対策:防水補修+屋根軽量化で条件緩和

 

ケース2:屋根軽量化+金物補強済

申込:耐震診断評点1.0、補強写真提出

結果:保険料抑制/特約制限なしで成立

 

ケース3:区分マンション・専有配管老朽

申込:水濡れ重視

審査:配管更新計画の有無確認

結果:水濡れ免責が高めで承認

 

ケース4:再建築不可

申込:建物時価での見積

留意:評価・再取得不可のため保険金額設定は慎重に

代替:家財+地震保険を厚めに

 

ケース5:賃貸中テラス・入居者事故多発

審査:入居者保険の加入状況確認

対策:入居条件化+原状回復ルールの明確化で継続可

 

ケース6:空き家(長期不在)

留意:空き家特約見回り体制が条件になる場合

代替:管理委託や巡回記録の提出で引受可能性UP

11. 旧耐震“加入前チェックリスト”

建物状況

・□ 屋根の割れ/ズレなし [ ] 軽量化済み

・□ 外壁のクラック補修済み

・□ 雨漏り歴なし/あれば修理済証明

・□ 基礎のひび・蟻害なし

・□ 感震ブレーカー・漏電遮断器あり

・□ 分電盤・コンセントの焼けなし

・□ 給排水配管の更新歴がある/写真あり(隠蔽配管は図面も)

 

書類

・□ 耐震診断書/改修記録(写真・領収)

・□ 登記簿・図面(面積整合)

・□ 管理規約(区分)・大規模修繕履歴

 

契約

・□ 評価は再調達価額を選択

・□ 水濡れ・破損汚損を付帯

・□ 地震保険:建物+家財

・□ 免責金額は生活防衛に適正か

12. よくある誤解Q&A

Q1:古い家はどうせ保険に入れない?
A:補修と証拠があれば可能性は高まります。未修理放置は難しい。

 

Q2:時価のほうが保険料が安いから得?
A:支払時に大幅減額になりやすく、再調達価額が無難。

 

Q3:地震で出火した火事は火災保険で出る?
A:地震起因は火災保険対象外地震保険または地震火災費用で備える。

 

Q4:水漏れは全部出る?
A:経年劣化・施工不良は対象外になり得ます。原因証拠を。

 

Q5:類焼したら全額賠償?
A:日本は失火責任法により、重大な過失でなければ賠償責任を負わないのが原則。
自宅の再建は自分の火災保険で類焼損害特約は任意。

 

Q6:再建築不可は入れない?
A:商品・会社による。評価方法特約制限で引受の余地あり。

 

Q7:免責ゼロが一番安心?
A:保険料は上がります。年間の小口事故想定家計で決める。

 

Q8:管理組合の保険があるから専有部は不要?
A:専有部内の配管・内装・家財は原則対象外個別加入が基本。

13. 見積り依頼テンプレ(コピペOK)

13. 見積り依頼テンプレ

物件:神奈川県○○市○○、築年:1979年、構造:木造
希望:再調達価額、風災◯、水災(地域×なら外し)、水濡れ◎, 破損汚損◯
特約:臨時費用、残存物片付け、地震火災費用
地震保険:建物・家財とも付帯
添付:外観4面、屋根・基礎・配管(更新前後)、耐震診断、修理領収・写真
備考:雨漏りは昨年修理済/感震ブレーカー設置済

14. 地域リスクの見方

・水災:想定浸水深・土砂警戒区域→高ければ水災付帯+免責低く

・風災:海抜・沿岸・台風経路→免責調整や耐風対策

・地震:断層・地盤(造成・盛土)→地震保険の家財も忘れず

・ハザードマップは各自治体公式サイトで最新をご確認ください。

15. 旧耐震×費用を抑える“現実解”

・小口は自費:免責5~10万円に上げ保険料を圧縮

・頻発系に集中投資水濡れ・破損汚損・臨時費用を厚めに

・家財で生活再建:建物の制約が強い場合、家財+地震で守る

16. まとめ

16-1. 加入前の建物チェックが第一歩

・未修理の劣化は保険加入を難しくする

・雨漏り → 修繕記録・写真必須

・白蟻被害 → 駆除済みで証明書を添付

・配管の水漏れ → 修理領収書を残す

修理をしてから申込みが原則。修理前だと「対象外」「条件付き」で返ってくることが多い。

 

16-2. 補償の中心は「水濡れ」と「地震」

・旧耐震では特に給排水管の老朽化からくる漏水事故が多発。

・水濡れ補償は必須級。免責も小さめに設定したい。

・地震保険は生活再建の命綱

・建物+家財の両方にセットすることで「住む場所」と「生活用品」の両輪をカバー。

・全壊時は建替資金の一部、大破以下でも修繕費・引越費用の足しになる。

 

16-3. 評価方法は「再調達価額」を基本に

・時価評価は安いが危険

・古い物件だと支払額が数百万円に減額され、再建不可能なケースあり。

・再調達価額なら建替・修繕に必要な費用が出る

・築年数が古いからこそ「時価」ではなく「再調達」を選んで備えるのが鉄則。

 

16-4. 火災保険+地震保険=安心セット

・火災保険だけでは「地震起因の火事」も補償外。

・地震保険と合わせて初めて「旧耐震物件でも生活を守れる形」になる。

・地震火災費用特約も忘れずにチェック。

 

16-5. 写真・書類を揃えると審査が通りやすい

用意すべきは以下の“6点セット”:

・建物外観の写真(4方向)

・劣化箇所の修繕前/修繕後の写真

・修繕工事の見積書・領収書

・耐震診断書や補強証明書

・登記簿・平面図

 (区分マンションの場合)管理規約や修繕履歴

書類の有無で、保険会社の引受姿勢は大きく変わる

 

16-6. 特約で“事故後の生活”を守る

・臨時費用保険金:一時的な宿泊費・雑費に充当できる

・残存物片付け費用:倒壊・半壊時のガレキ処理費用は想像以上に高額

・修理費用特約:小さな破損や汚損も補償でき、自己負担を減らせる

・類焼損害・失火見舞金:隣家トラブル対策にもなる

 

16-7. 地域リスクも忘れずに

・河川近く → 水災補償は外さない

・海沿い → 高潮・塩害も想定

・山の斜面 → 土砂災害警戒区域に入っていないか確認

ハザードマップをもとに、補償の要否を決めるのが賢い。

 

16-8. 保険料を抑える工夫

・免責額を5万~10万円にすると保険料が下がる。

・長期契約よりも最近は1年~5年契約を比較するのが主流。

・水災リスクが低いエリアなら「水災補償なし」も検討できる。

 

16-9. 管理組合や賃貸オーナーの注意点

・区分所有者:専有部分(内装・設備・家財)は必ず個別に加入。

・管理組合:共用部の配管やエレベーター更新履歴を整備し、保険会社へ提示すると条件が良くなる。

・賃貸オーナー:賃貸人賠償責任・家賃減収特約をセットすると安心。

 

16-10. まとめの最重要チェックリスト

1,雨漏り・白蟻・配管劣化は修理してから申込む

2,水濡れ補償は必須。免責は低めに設定

3,評価は必ず再調達価額で

4,火災保険+地震保険のセットで生活再建を支える

5,書類(写真・診断書・修繕証明)を揃えてから依頼

6,特約で“生活費・片付け・小さな事故”をカバー

7,地域リスク(水害・風害・土砂)を考慮して選択

8,保険料は免責や補償の絞り込みで調整

9,区分所有・賃貸オーナーは立場に応じた補償を

 

👉 つまり、旧耐震物件で火災保険に入るときは 「修理 → 書類準備 → 水濡れ+地震+特約」 という順序が肝心です。
これらを押さえることで、旧耐震物件でも「安心して住み続けられる保険設計」が可能になります。