残置物撤去の危険と対策

公開日:2025年10月26日

残地

当社でも残置物撤去に関するサポートを行っております。
見積りの取得から撤去依頼まで、お気軽にご相談ください。


ただし—— ここが重要な点なのですが、残置物撤去は「安く処分できれば良い」という単純な話ではありません。
金額・責任・情報管理・売却スケジュールなどが複雑に絡み、
判断を誤ると依頼者側に大きな負担が戻ってくるケースが少なくありません。

 

実際に現場で起きた事例を用いながら、

残置物撤去を依頼する際に注意すべきポイントを以下で整理してご紹介いたします。

 

【 残置物撤去依頼の注意と問題点 】

不動産の売却や引渡しにあたって「残置物撤去」は避けて通れない工程ですが、
単に“荷物を片付ける作業”と考えて依頼してしまうと、
後になって依頼者自身が大きな責任・費用・時間を負担させられるケースが少なくありません。

 

見積もり時には安く見えても当日に追加請求が起きること、
処分を任せたつもりが不法投棄となり、結果として依頼者が行政から指摘を受けること、
さらに撤去物の中から個人情報が悪用され、不法登記などに巻き込まれる事案も現場では実際に存在しています。

 

残置物撤去は「費用の比較」ではなく
“後から責任が戻らないように設計して依頼する” 行為 だという認識が必要です。
まずは、この分野に特有のリスク構造を正しく理解するところから始めることが重要です。

1)“安い”見積もりほど当日追加請求が起きやすい

1)“安い”見積もりほど当日追加請求が起きやすい

残置物撤去では、見積もりが安い業者ほど「当日になって金額が跳ね上がる」事例が多く見られます。これは偶然ではなく、最初から“安く見せて契約を取る”ために、見積段階で曖昧な条件のまま提示しているケースがあるためです。実際には次のような追加請求が典型的です。

 

例1|「これは産廃扱いなので別料金です」と当日になって言われる
見積もり段階では「家財処分一式」とだけ書かれていたため、依頼者は全て含まれると思っていたのに、現場で「これは産業廃棄物扱いなので追加」「分別が必要なので追加」と言われて金額が上がるケース。

 

例2|「想定より多かったので追加です」と量の認定を現場で変える
写真だけで見積りを済ませた業者などに多く、「思ったより量が多い」「分別に時間がかかる」などの理由で倍近くまで跳ね上がるケース。初めから増額できる余地を残したまま契約している例です。

 

例3|「階段作業・養生・搬出距離」が別費用として加算される
マンションにエレベーターがない・玄関前にトラックが横付けできない・共用部養生が必要といった“実務要因”が当日突然理由として提示され、「この条件は別途費用です」と追加されるケース。

このように、見積りの「安さ」は安心材料ではなく、
むしろ「後から増やせる余地を残しているサイン」であることが少なくありません。
残置物撤去では「金額を見る前に、条件が確定しているか」を確認することが重要です。

2)不法投棄の責任は業者ではなく“依頼者”に戻る

残置物の処分を業者に依頼したとしても、後にその荷物が不法投棄されていた場合、
最初に責任を問われるのは業者ではなく“元の所有者=依頼者側”です。
これは「廃棄物処理の責任は排出者にある」という運用が前提にあるためです。
現場で実際に起きているのは、次のようなケースです。

 

例1|山中に投棄された家具から郵便物が見つかり、依頼者に連絡が入る
業者が山林に不法投棄。回収された荷物から依頼者宛の封書が見つかり、
自治体はまず“名前のわかる元所有者”に事実確認と是正指導を行う。

 

例2|不法投棄が発覚し、再撤去・再処分費用を依頼者が負担させられる
行政は「誰が依頼したか」に関係なく、所有者に撤去命令を行うため、
結局、依頼者が別の業者に依頼し直し、二重の費用負担になる。

 

例3|撤去物の中の個人情報書類が転用され、別のトラブルに発展
投棄品の中に契約書控え・郵便物・申込書などが混ざっていた場合、
それらが第三者に渡り、不法登記や詐欺等の二次被害につながる例も実際にある。

 

つまり「業者に頼んだから責任は業者へ」という構造にはなっておらず、
処分の依頼時点から、依頼者自身が法的リスクを背負っていると言えます。
残置物撤去は“単なる廃棄”ではなく“責任の移転管理”という視点が必要です。

4)“量”よりも“現場条件”で費用は大きく変動する

残置物撤去の費用は「荷物の量」だけで決まると思われがちですが、
実際には現場ごとの“作業条件”によって金額が大きく上下します。
同じ量の荷物でも費用が倍違うことは珍しくありません。
主な変動要素は次のようなものです。

 

例1|マンションでエレベーターが無い(階段手運び)
重量家具や家電を階段で往復運搬する必要があると、
作業人数と時間が増え、その分費用が跳ね上がります。

 

例2|共用部養生(廊下・壁・エントランス等)の必要性
タワーマンションや管理規約が厳しい物件では、
搬出前に養生作業が必須になり、その工数が別料金となります。

 

例3|トラックが建物の前に横付けできない(搬出距離が長い)
敷地内に車両進入不可・道路幅が狭い・駐停車不可の立地では、
建物からトラックまでの距離搬送で人件費が大きく増えます。

 

例4|自治体や管理組合による分別ルールの厳しさ
地区により細分別が義務化されている場合、
事前分別の手間が発生し、その分コストが高くなります。

 

例5|特定品目(耐火金庫・ピアノ等)の専門搬出費が別途必要
一見荷物の総量は少なくても、重量物・特殊品が含まれると
専門業者手配が必要になり、追加費用が発生します。

 

このように、費用は「どれだけ捨てるか」よりも
「どんな現場でどう運ぶか」によって左右されます。
量だけで業者比較をしてしまうと判断を誤る原因になります。

5)“協会役員”“無償で手伝う”という肩書が安心材料ではない例

残置物撤去では、「私は◯◯協会の役員です」「無償で業者紹介を手伝います」
という“肩書き”や“善意”を装った言葉が安心材料として使われます。
しかし、その“安心させること自体”を目的に設計された誘導手法は実在します。

 

例1|協会の副会長を名乗りつつ同族業者へ誘導
「より良い業者を無償で」と言いながら紹介された業者の見積りは他社の倍額。
登記や代表者名を確認すると同じ苗字で、実質的には身内企業という例。

 

例2|“ボランティア”と説明しつつ裏で紹介料を受け取る構造
依頼者には「お金は取りません」と言いながら、
紹介先の業者から紹介手数料を受けているケースは実務で珍しくありません。

 

例3|権威づけの肩書そのものが「集客目的で作られたもの」
肩書で安心する人が多いため、わざと肩書を作る手法を取る人もいます。
例えば「◯◯境界会会長」と名乗りながら、
実際に聞いてみるとメンバーが3人しかおらず、事実上“自称”に過ぎない例もあります。

 

このように「肩書」と「無償」は信用の理由にはなりません。
残置物撤去において判断するべきは“誰が言ったか”ではなく、
その紹介によって提示される条件・金額・リスクが妥当かどうか です。

6)見積りが「わざと曖昧」に作られ、後から増額できる設計になっている

残置物撤去の見積りは、金額そのものよりも
「増額できる余地が残されたまま出されているか」のほうが重要です。
曖昧さが偶然ではなく“意図的に残される”ケースは少なくありません。

 

例1|「撤去一式」の一行のみ — 内訳が出ていない
内訳が無い見積りは「何が含まれ、何が別なのか」後からいくらでも解釈でき、
当日になって「これは対象外なので追加」と言える余地を確保しています。

 

例2|“写真だけ”で見積りを出し、現地調査前提にしていない
現地確認をしていない見積りは、
そもそも当日増額するための前提づくりであることが多く、
「思っていたより多い/状況が違った」といくらでも理由づけできます。

 

例3|「想定外の場合は別途協議」と一文だけ入れておく
この一行があるだけで、
・階段搬出
・分別の追加
・不用品区分の変更
・搬出距離の増
など何にでも援用でき、実質的な白紙条項になります。

 

例4|管理規約・養生・車両制限など“確認不足”を故意に放置
規約確認をしないまま見積りだけ出し、
当日「養生が必要でしたので追加」「時間制限があるので増員分加算」と
“わざと後出し請求できる状態”にしておくケース。

 

例5|希少品・危険物の存在を「見て見ぬふり」して当日課金
耐火金庫・大型家電・ガラス什器・塗料・薬品などを
見積時にあえて触れず、現地で「これは専門扱いなので別料金」と告げるやり方。

 

曖昧な見積りとは「金額が低い見積り」ではなく、
“後からいくらでも増やせるための仕組みが残された見積り” のことです。
数字を見る前に「曖昧な余地が残されていないか」を確認することが重要です。

7)売買直前に残地物問題が発覚し、決済延期・買主離脱となる事案

残置物の問題は「片付ければ済む話」ではなく、
売買そのものの進行に影響し、最悪の場合は契約が破綻します。
実際の現場では次のような形で表面化します。

 

例1|決済前の最終確認で残置物が残っており、買主が引渡し拒否
買主から「この状態では引渡しとは言えない」と指摘され、
決済日当日に延期となり、再手配費用・金利・賃貸延長負担などが発生する例。

 

例2|撤去費用をめぐり交渉がこじれ、買主が購入自体を取りやめ
「誰が費用を負担するか」「どの範囲まで撤去か」の調整がつかず、
買主側が不信感を抱いてキャンセル → 物件販売が振り出しに戻るケース。

 

例3|引渡し遅延によって連鎖的に別件も破綻
買主が売却先決済資金として本物件の引渡しを待っていたなど、
後ろに別の取引がぶら下がっている場合、
遅延一つで複数の契約に損害が波及することもあります。

 

残置物は“売却完了の最後の障害物”ではなく、
売却全体を止める引き金になる要素 です。

 

「間に合えばいい」「当日どうにかすればいい」ではなく、
売買スケジュールの一環として、前倒しで管理すべき工程です。

8)結果として“安く選んだ人ほど一番高くつく”理由

残置物撤去では「安く済ませたい」という考えが自然に働きますが、
現場ではむしろ “安さを優先した人ほど、最終的に一番高く支払っている” という構造が繰り返されています。
理由は次の通りです。

 

理由1|当日追加請求により、初期見積の意味が消える
安く見せて契約を取った後で金額を吊り上げるため、
最終的には適正価格以上の支出になりやすい。

 

理由2|不法投棄や処理不備による“やり直し費用”が発生する
違法処理が発覚すると、依頼者側が再撤去・再手配を行うことになり
「2回分の費用」を支払うことになる。

 

理由3|売買遅延による損失の方が大きくなる
決済延期・買主離脱・賃貸延長・二重ローンなど、
「撤去費用以外の損失」が発生することで、結果的に高額損へ直結する。

 

理由4|精神的負担・労力コストが金額以上に蓄積する
業者との交渉・再手配・関係者調整など、
時間や心理的負担は数万円では換算できない大きなロスとなる。

 

つまり「最初に支払う金額」を節約しているつもりが、
結果として「後からの損失」を何倍にも膨らませているというのが実務の現実です。
残置物撤去は“安さの勝負”ではなく“損失防止の設計”で選ぶべき作業です。

【売買と絡めたときに特に問題が大きくなるポイント】

残置物撤去はそれ単体の問題に留まらず、不動産売買に直結した深刻なトラブルへつながることがあります。実務の現場で特に多いのは次のようなケースです。

 

●撤去作業中に室内を傷つけられ、売主・買主双方と再調整が必要になる
大型家具の搬出時に壁・床・建具を傷つけられると、
「誰が補修するのか」「いつ補修するのか」の協議が必要になり、
決済日がずれたり、買主が不信感を抱く原因になります。

 

●“どこまで片付ければ引渡し可能か”の認識が依頼主と業者間で共有されていない
例えば「残す物」と「全撤去」の線引きが曖昧なまま進めた結果、
引渡し直前に買主から「約束と違う」「引渡し状態ではない」と指摘され、
引渡し延期・違約金・契約交渉のやり直しに発展する例もあります。

 

●売却直前に不法投棄が発覚し、依頼者(売主)に責任が戻る
「安かったから」と委託した業者が不法投棄をしていたことが後から判明し、
行政から連絡・説明・再撤去命令が入り、
決済スケジュールそのものが崩壊することもあります。

 

売買と絡む残置物撤去は、
「片付いていれば良い」ではなく
“引渡し条件を満たした上で責任が戻らない状態にする”ことが本質です。

 

安く依頼できたことよりも、
傷がつかないこと/約束と齟齬がないこと/後から追及されないこと
この3つを守ることのほうが、売却全体に与える価値は圧倒的に大きくなります。

 

当社では、残置物撤去を単なる外注任せにはしておりません。
「紹介して終わり」ではなく、引渡しに支障が出ないこと・当初の約束が守られること を最優先に考えています。


そのため、当社がご紹介する業者については、可能な限り

・見積もり立ち会い時
・作業当日の撤去立ち会い
・撤去後の状態確認

 

これらの工程に当社スタッフが同席し、第三者の目線から状況を確認いたします。

もし、当初の打合せ内容と違う作業が行われていたり、
約束した範囲の荷物が残っていたり、
作業方法に懸念がある場合には、
その場で当社から業者へ指摘・是正を求めます。

 

依頼者ご本人が業者と直接やり取りをすると、
言いづらかったり、説明が難しかったり、
時間的に介入できない場合もありますが、
当社が間に入ることで、

・齟齬があってもその場で軌道修正ができる
・責任の所在が曖昧にならない
・売買スケジュールへの影響を最小化できる

という大きな安心に繋がります。

 

残置物撤去のトラブルは「気づいた時には遅い」性質のものが多く、
後から修正するほど手間も費用も大きく膨らみます。

 

だからこそ、依頼時点・作業時点・完了時点の3段階で当社が介入すること
金額以上に価値のある“予防策”であると考えています。

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